2016年2月18日木曜日

リピドーさんとのタイマンの話

はて、ブログも公開したことで史上最大の更新プレッシャーがかかってきたので、さっそく書きます。といいつつ早1週間。2月も後半ですね。


リビドーさん話の続きです。
(ちなみにリビドー家の集いの後行ったクラブイベントでは、元Le TigreのJD SAMSONがDJとして回していてなかなか体力持ってかれました。才能の塊JD SAMSON)


リビドー家のn'importe quoi(フランス語でむちゃくちゃ)なパーリーに足を運んでから3日後、ご本人からメッセージを頂きました。


「おぱぴ、ヤッホー(死語。雰囲気だけくみ取ってくれ)こないだは少しだけでも会えて嬉しかったわ、近いうちにビールでも飲みましょう」


あらマァなんとご丁寧なこと。
アプリで呼んだ人全員に同じテンプレで送信してるのかしらと思いながらも、内心では覚えていてくれたことにほんの少しだけ胸が踊る。
とはいえ、私の中でリピドーさんは百獣の王系パワーダイク(=喰われて面倒な事になったら今後のレズ社交に差し障りが出るので余計な関わり合いは避けておきたい)認定になってしまったため、好奇心よりも恐怖心が勝っている状態。

これはもはや私のパリでのレズ生死を賭けた争いである。
まるで八千草薫氏を相手に初のベッドシーンに挑む45歳新人女優の様な、
錦織圭とのエキジビションマッチに挑むテニス未経験のテニサー所属18歳女子大学生のような、
そんな緊張感が全身に走る。
八千草薫氏を喘がせる程の粘り気のある演技が出来るのだろうか、
錦織圭の打つボールで全身打撲にならないだろうか、
リピドーさんが余暇に楽しくおビールを飲まれるお相手が私なぞに務まるのだろうか、
ご機嫌を損ねて足の指を戦車ヒールで粉々に砕かれたりしないだろうか


どうしよう、今回は無難にスルーすべきか否か、と散々迷った挙句、ここでまた某ホモの呪い「縁はどこに転がってるか分からないのよ!」を思い出して恐る恐る翌日に返信。


「もちろん!こちらこそ呼んでくれてありがとう、いつ暇?」


リピドーさんのことだから、きっと毎週末ホルマリンアルコール漬けになってて私の様な下等歩兵は予約待ちなんだろうなと期待せずにいたら、今週の土日もその次の週も空いてるからいつでもいいよ〜と返事が来る。
案外私の方が忙しく、翌週の金曜日に飲みに行くことになった。


パリジェンヌ特有の悪い癖なのか、フランス人の国民性なのか、1週間以上先の約束をすると高確率でドタキャンを食らうことを知っている私は、火曜日の時点で金曜日の件を確認。リピドーさんアメリカ人だけど。



水曜日の夜中になって、一言

「yup! (もちろん!)」とお返事が来る。


リピドーさん筆不精過ぎて(或は私たる平民なぞに割く時間が惜しいのか)なかなか待ち合わせ場所を決めるのに苦労するも、結局マレ地区にあるビールバーで落ち合うことに。


そして顔合わせ当日。

前日から何故かウチに泊まっていた22歳の日本人女子大学生相手に洋服のコーディネートを入念にチェックしてもらい、紺のブラウスにネイビーのセーターを合わせるオシャレもどきなアウトフィットで出陣。
夜9時半に店集合だったので、リピドーさんをお待たせしてはならないと仕事を早めに切り上げてダッシュでメトロに乗車。
自慢の韓流ヘアの浮き具合を、路駐している車のウィンドウで毎秒確かめながら歩みを進める。
実はこの日のために3日前にわざわざ美容室でカットをし、18ユーロもするヘアワックスも仕入れておいたのだ。


健気過ぎる私。




目当てのバーは集合5分前にすぐに見つかるも、リピドーさんから10分程遅れるとメールが来る。
こういう時に1人で中で待つ事が出来ない小心者の私は、外でタバコを咥えて待つ。
暖冬のパリと言えど、日が沈んだ後の空気は痺れる冷たさ。
リピドーさんとのタイマンのことを考えれば考えるだけ、緊張で手足の体温が下がる。


待ち合わせ時間を25分過ぎたあたり、つまり私が寒空の下で凍えながら待ち始めて30分、ご本人が軽やかに登場。
足元の戦闘機は今日は封印してある、そしてロケットランチャーも担いでおらず、とても身軽な装い(つまり手ぶら)。 
ストパーをあてたブロンドヘアーを七三の割合で斜めに流し、前回の動物園でお見かけした時よりも色っぽい。
本人シラフだからかな。

友達に30分待たされたら、口から嫌味が数珠つなぎで飛び出すくらい短気な私が、営業スマイルを1ミリも崩さずにご挨拶。


ハーイ、リピドーさん!
ハーイ、おぱぴ久しぶり!



リピドーさんは自宅にご友人を泊めているらしく、鍵が1つしかないので出るのにおそろしく時間がかかってしまったとのこと。
ご友人がせっかくパリにいるのに、華金に私なぞの相手をしてもらうことを若干申し訳なく思いながら、でもそれだったらもっと余裕持った集合時間設定にすればいいのに、と少し正気に戻ったもう1人の私が頭の中で舌打ちする。


気を取り直してバーでビールを1パイント=0.6リットル買っていただき、(リピドーさんはクレジットカードしか持ってないので、どういう理論なのか庶民の私は到底理解しかねるが、とにかく奢ってくれた) 空いている席に座って乾杯。


今週は仕事どうだった?なんて他愛のない話題から始まり、これまでのパリの生活のことまで、リピドーさん息を吐く暇もなく、こちらが質問するスキも与えずとにかく喋る喋る。
マシンガントークの間に平民に話を振ってくれるが、そこからまたトークが広がり、テーブルが彼女の独演会場と化す。

リピドーさんは鼻の穴と穴の間にピアスがあり、笑うとそれがプルプル揺れて可愛らしいのだが、そこだけを見つめると目線が下がって鼻くそに気を取られてる人みたくなる(私自身の実際の経験に基づく)ので、鼻ピのことを考えないようにする。

考えないようにすればするほど余計に気になってチラチラ見てしまう…



そんな私の葛藤をよそに元カノからワンナイトの相手の話まで、ご自身の下半身事情を赤裸々に語り続けるリピドーさん。


先月デートしたあの妖怪ウォッチ(もとにかくよく喋るお化けだった)の二の舞になるんじゃないかとヒヤヒヤしながらも、自然と話は世界のクィアカルチャーの話題に。

あの人知ってる?この人は?なんて業界内の小ネタで暫し盛り上がり、互いの好きなクィアポルノスターの話になる。



まさか初対面(に近い)人と、喋り始めて1時間でお気に入りのポルノサイトやよく見るジャンルの話が弾むとは完全なる予想外。
クィア系のポルノってフェミだから観てて政治的にも性欲的にも安心するよね〜などと、これまでのデート(果たしてこれはデートだったのかと言うのは置いといて)では絶対に口から飛び出さなかったような事がツルツルと滑り、昨今のフェミの運動話やらも加わってリピドーさんと更に意気投合。
(リピドーさんや私のフェチをネットで全世界に公開するのも憚られるので、気になる人は本人に聞いて下さい。)


リピドーさんも北米東海岸のとある全寮制の学校で寄宿舎生活を送っていたらしく、なんだか境遇も身近でお互いに頷きあうことばかり。
見た目や色んな先入観で人を判断してはいけないことを自分が1番よく知っているはずなのに、数時間前の印象がガラリと変わり、まるで古くからの知り合いのような懐かしさまでこみ上げてくる。
 
このバーで会うことにしたのも、前日友達を集めて(またかい!)飲みに行き、そこで全員にしつこく相談した結果なんだそうな。
可愛らしいとこあるじゃんね。




果たしてそんなこんなでビールは3杯目、1リットル半近くものブロンディ(色の薄いビール)を体内に流し込み、すっかり酔いがまわる。
仕事の後そのまま出てきたので夕食を食べる暇すら無かったのだ。



既に時刻は夜中の2時過ぎ
気づけば終電組のお客さんは既に帰宅済み、バーの真ん中の開いたスペースは時間を気にしない酔いどれのダンスフロアと化している。


突然立ち上がったリピドーさん、私の手を取りオールドスクールなヒップホップをバックに踊り始める。
今夜戦闘機ヒールを履いていない彼女は、私よりも少し背が小さくて何だか……と思っていたらコラコラ。


ご想像通りです





4時ごろ店を出てさてどうしようかとなるも、リピドーさんはお友達を朝から空港に送りに行くので自宅に帰らなくてはならないとのこと。
若干の不服と、反対に安心も感じながら、じゃあ家まで送って行くよと伝える。
(読者の皆様はご存知の通り、リピドー宅はマレ地区のど真ん中、つまりバーから徒歩3分のところにある)


すると、そんなの超ヘテロノーマティブじゃん!っとイタズラっぽく笑って私をタクシーに押し込むリピドーさん。


うわ、萌える。
そういうの激萌える。



もし明日暇なら夜ウチで飲まない?とドアが閉まる間際に誘われ、一瞬の迷いもなく快諾
ニヤニヤしながらタクシーに揺られ、20分後には自宅のベッドで爆睡したのでした。


ちゃんちゃん!おしまい!










と言いつつも、気になりすぎて堪らない人のためにその翌日のまとめも。

翌日起きてからヘラヘラと集中出来ずに宿題やら家事やらをしていたら、夕方にリピドーさんから

「今夜だけど、友達が新しく始まったクラブイベントに行きたいらしくて、もし興味あれば一緒に行こうよ!その前にウチに飲みに来てー」

とメールが来る。
え?クラブ行くの?面倒くさくね?
彼女の本心が掴めぬまま赤ワイン持参で22時ごろ遊びに行くと、本人はケロっとした顔で クラブ?え?まさか!行かないでしょう?と前日の続き、
そう、超絶肉食系女子リピドーさんとの天下一武闘会が始まったのでした。
恐るべしリピドー。
枯れるわ。
夏のポインセチアなみに枯れたわ。
翌日夕方まで産まれたままの姿だったわ
だからリピドーさんって名前になったんですよ。




そしてもう1つ。
実は例のバーで財布をスられてました。
いくら女の子とイチャコラしても、貴重品の管理には敏感にならないといけませんね。
お金ほとんど入ってなかったから良いものの、カード再発行にも時間を要し高い授業料を支払う羽目に。
前回1年ちょい前にパリで最新型のスマホをスられたのも同じようなシチュエーションだったので、バカというかなんというか。
いや、本当にバカなんだな。



リピドーさんネタはこれにて一旦終了ですが、また気が向いたらリピドーネタを落とすことにします。
では。








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